東京都葛飾区に位置する水元公園は、都内最大級の水郷公園として知られていますが、野鳥愛好家やカメラマンの間では「カワセミの聖地」として特別な存在です。
鮮やかなコバルトブルーの羽を持つカワセミは「空飛ぶ宝石」とも呼ばれ、その美しさから多くの人々を魅了してやみません。水元公園が聖地と呼ばれる理由は、都心からのアクセスの良さに加え、豊富な水辺環境と魚影の濃さ、そして比較的人に慣れた個体が多いという3つの条件が揃っているからです。
しかし、いざ撮影に出かけても「どこに行けばいいかわからない」「何時間も待ったのに会えなかった」という声も少なくありません。
この記事では、水元公園で確実にカワセミに出会うための具体的な出現スポット、ベストな時期・時間帯、そして決定的瞬間を捉えるための撮影テクニックまで、現地で培われた実践的なノウハウを余すことなくお伝えします。初めての方でも空振りせず、最高の一枚を持ち帰れるよう、プロの視点から徹底解説していきます。
水元公園でカワセミに会える時期とベストな時間帯
見られる時期:通年観察可能、狙い目は春と冬

水元公園のカワセミは基本的に通年観察できるのが大きな魅力です。留鳥として一年中生息しているため、季節を問わず出会えるチャンスがあります。
特におすすめの時期は以下の2つです。
春から夏(4月〜7月):子育てシーズンで活動が活発になります。巣穴への餌運びや幼鳥への給餌シーンなど、ドラマチックな瞬間に遭遇できる確率が高まります。親鳥が何度も水に飛び込む姿は圧巻です。
冬(12月〜2月):羽の色が最も美しくなる時期です。繁殖期を終えた個体は羽が整い、光沢のある鮮やかなブルーが際立ちます。また、木々の葉が落ちて視界が開けるため、発見しやすくなるというメリットもあります。
おすすめの時間帯:早朝と夕方が狙い目

カワセミが最も活発に活動するのは早朝(日の出から9時頃まで)と夕方(16時以降)です。
早朝は空腹のカワセミが盛んに狩りをする時間帯で、飛び込みシーンに出会える確率が格段に上がります。また、人が少ないため野鳥も警戒心が薄く、近距離での観察が可能です。朝日に照らされたカワセミの羽は特に美しく輝きます。
夕方も同様に採餌活動が活発化します。日中は物陰で休んでいることが多いカワセミですが、夕方になると再び動き出すため、仕事帰りでも観察できるのが嬉しいポイントです。
逆に、日中(10時〜15時頃)は日差しが強く暑い時期には休息していることが多いため、出会える確率は下がります。ただし、曇りの日は別です。
天候の影響:曇りの日こそチャンス
意外に思われるかもしれませんが、曇りの日は撮影に適した条件です。
晴天の日は水面への光の反射が強く、カワセミの姿が白飛びしたり、逆に影が濃くなりすぎて羽の美しいグラデーションが表現しづらくなります。また、強い日差しは目が疲れ、長時間の観察にも不向きです。
曇りの日は柔らかく均一な光が回るため、羽の微細な色合いやディテールまで美しく撮影できます。カワセミ自身も眩しさを感じにくいのか、活動時間が長くなる傾向があります。
小雨程度なら観察は可能ですが、強い雨の日はカワセミも活動を控えるため、無理をせず天候回復を待つのが賢明です。

【完全マップ】カワセミの主要出現スポット3選

水元公園は広大ですが、カワセミが高確率で現れるポイントは絞られています。効率よく観察するために、以下の3つのスポットを押さえておきましょう。
①かわせみの里(水辺のふれあいルーム付近):初心者におすすめの鉄板スポット

水元公園内で最もメジャーで確実性の高いポイントがこの「かわせみの里」周辺です。
この場所の最大の特徴は、観察用に設置された人工の止まり木があることです。カワセミはこの止まり木を気に入っており、高い頻度で利用します。止まる位置が予測しやすいため、初心者でも撮影チャンスを逃しにくいのが魅力です。
水辺のふれあいルーム前の池は比較的浅く、小魚が豊富なため、カワセミの狩り場として最適な環境が整っています。週末には多くのカメラマンが集まりますが、それだけ実績のあるポイントということです。
施設には休憩スペースやトイレもあるため、長時間の観察にも便利です。まずはここから始めて、カワセミの行動パターンに慣れることをおすすめします。
②小合溜(こあいため)沿い:自然な姿を撮るならここ
より自然に近い野生の姿を撮影したい方には、小合溜沿いのエリアがおすすめです。
小合溜は水元公園の中心を流れる大きな水路で、その全長は約1.2kmにも及びます。遊歩道が整備されているため、歩きながら複数のポイントをチェックできるのも利点です。早朝に遊歩道を散策しながらカワセミを探すのは、とても贅沢な時間です。
特にバードサンクチュアリ周辺は人の立ち入りが制限されているため、カワセミも警戒心が薄く、のびのびとした行動を見せてくれます。自然の枝に止まる姿や、葦の間から飛び出す瞬間など、図鑑のような一枚が狙えるポイントです。
バードサンクチュアリは、野鳥観察舎から見ることができます。
③不動池・ごんぱち池周辺:穴場スポット

前述の2箇所に比べて人が少なく、静かな環境でじっくり観察したい方向けの穴場が不動池とごんぱち池周辺です。
これらの池は小規模ながら、岸辺に木々が迫る自然豊かな環境で、カワセミにとって理想的な狩り場になっています。特に平日は訪れる人も少なく、貸し切り状態で観察できることも珍しくありません。
不動池周辺は木々の枝が水面に張り出しているため、止まり木として利用されやすく、じっくり構えて待つスタイルに適しています。ごんぱち池は小さいながらも魚影が濃く、短時間で何度も飛び込みシーンが見られることがあります。
混雑を避けたい方や、落ち着いて撮影に集中したい方は、ぜひこのエリアも訪れてみてください。思わぬ大物写真が撮れるかもしれません。
カワセミ撮影のための推奨機材と設定
美しいカワセミの姿を捉えるには、適切な機材選びと設定が重要です。ここでは実践的な推奨スペックをご紹介します。
カメラ・レンズ:望遠が必須
カワセミは警戒心が強い鳥のため、ある程度の距離を保って撮影する必要があります。そのため焦点距離800mm前後(フルサイズ換算)が理想です。
予算が限られる場合は、テレコンバーターを使用して焦点距離を伸ばす方法もありますが、画質や明るさが若干犠牲になる点は留意してください。
レンズの明るさ(F値)は、できればF5.6以下が望ましいです。カワセミの飛び込みは一瞬のため、高速シャッターを使う必要があり、そのためには明るいレンズが有利になります。
基本の設定:高速シャッターが鍵

カワセミ撮影の基本設定は以下の通りです。
シャッタースピード:
- 止まっている姿:1/1000秒以上
- 飛び込みや飛翔:1/2500秒〜1/4000秒
カワセミの飛び込みは信じられないほど速いため、高速シャッターでないとブレてしまいます。特にダイビングの瞬間は1/3200秒以上を確保したいところです。
絞り(F値): 開放付近(F5.6〜F8程度)に設定することで、背景を美しくぼかし、カワセミを際立たせることができます。また、開放にすることでシャッタースピードを稼ぎやすくなります。
ISO感度: シャッタースピードを確保するため、ISO800〜3200程度まで上げることも辞さない姿勢が必要です。最新のカメラは高ISO性能が優れているため、ノイズを恐れずに設定しましょう。
フォーカスモード: 必ずコンティニュアスAF(AF-C/AIサーボ)に設定してください。動き続けるカワセミにピントを合わせ続けるには、この設定が必須です。また、フォーカスエリアは「ワイドエリア」や「動物検出AF」を活用すると、飛翔中のカワセミも捉えやすくなります。
連写モード: 決定的瞬間を逃さないため、高速連写モードをオンにしておきましょう。秒間10コマ以上撮れるカメラなら理想的です。
あると便利なアイテム
三脚・一脚: 超望遠レンズは重量があるため、長時間手持ちでの撮影は困難です。三脚や一脚があれば疲労を軽減でき、ブレも防げます。ただし、水元公園では通路を塞がないよう配慮が必要です。
迷彩ネット・ブラインド: より近づいて撮影したい場合、迷彩ネットやブラインド(撮影用テント)を使用することで、カワセミに人の存在を悟られにくくなります。ただし、設置場所には十分な配慮が必要で、他の観察者の視界を遮らないようにしましょう。
予備バッテリー: 寒い冬の早朝は特にバッテリーの消耗が早くなります。必ず予備を持参してください。
防寒・防暑対策: 早朝の観察では冬場の防寒、夏場の熱中症対策が不可欠です。レジャーシートや折りたたみ椅子があると、長時間の待機も楽になります。
決定的な瞬間を撮るための「行動パターンの読み方」
機材や設定が整っても、カワセミの行動を理解していなければシャッターチャンスを逃してしまいます。ここでは、プロも実践している行動パターンの読み方をご紹介します。
鳴き声に注目:「チーッ!」を聞き逃すな
カワセミは飛翔時に「チーッ!」という高く鋭い鳴き声を発します。この声が聞こえたら、すぐに周囲を見渡してください。
多くの場合、鳴き声の直後にカワセミが飛来し、近くの枝に止まります。このタイミングを逃さないことが、遭遇率を大きく上げるコツです。
また、つがいで行動している場合は、お互いにコミュニケーションを取るために鳴き交わすこともあります。1羽を見つけたら、もう1羽が近くにいる可能性も意識してみてください。
静かな早朝であれば、100m以上離れた場所からでもこの鳴き声は聞こえます。耳を澄ませて周囲の音に集中することが、撮影成功への第一歩です。
鳴き声の参考はこちらの動画をご覧ください。
ホバリング:飛び込む直前のサイン
カワセミが水面上で羽ばたきながら空中で静止する行動(ホバリング)を見せたら、それは飛び込みの予備動作です。
ホバリングは獲物を正確に狙い定めるための行動で、数秒間続くこともあります。この瞬間を見逃さなければ、次の飛び込みシーンを高確率で撮影できます。
ホバリング中は連写モードでシャッターを切り続け、飛び込む瞬間に備えましょう。羽を広げたホバリングの姿自体も非常に美しく、撮影価値の高いシーンです。
ただし、すべての飛び込みの前にホバリングするわけではありません。枝から直接ダイブすることもあるため、油断は禁物です。
縄張り意識:同じ枝に戻ってくる習性
カワセミには縄張り意識が強く、お気に入りの止まり木に何度も戻ってくる習性があります。
一度カワセミが止まった枝や杭は、その日のうちに再び利用される可能性が高いのです。そのため、カワセミが飛び去った後も、同じ場所にカメラを向けて待つのが効果的な戦略になります。
特に狩りに成功した場所は、「ここは餌が豊富だ」と学習するため、短時間のうちに何度も訪れることがあります。根気よく待つことが、決定的瞬間への近道です。
また、朝一番に止まった場所は「お気に入りスポット」である可能性が高いため、その位置を覚えておくと翌日以降の撮影にも役立ちます。
水元公園を訪れる際のマナーと注意点
美しい自然と野鳥を守り、すべての人が気持ちよく楽しめるよう、以下のマナーを必ず守りましょう。
三脚の使用制限と通路の確保
水元公園では、混雑する遊歩道や狭い場所での三脚使用が制限されている箇所があります。
三脚を使用する際は、必ず他の通行者の妨げにならない場所を選び、通路の端に寄せて設置してください。特に週末は散歩やジョギングを楽しむ一般の来園者も多いため、配慮が不可欠です。
長時間同じ場所を占有することも避け、譲り合いの精神を持ちましょう。また、三脚の脚を広げすぎてつまずきの原因を作らないよう注意してください。
野鳥にストレスを与えない距離感
カワセミは警戒心の強い野鳥です。必要以上に近づいたり、餌付けをしたりすることは絶対に禁止されています。
餌付けは野鳥の自然な行動パターンを狂わせ、健康被害や生態系への悪影響をもたらします。また、特定の人間に依存することで、本来の狩りの能力が低下する恐れもあります。
撮影のために大きな音を立てたり、巣に近づきすぎたりする行為も厳禁です。特に繁殖期は、人間の接近によって親鳥が巣を放棄してしまうこともあります。
望遠レンズを使って適切な距離から観察することが、野鳥にも撮影者にも最善の方法です。
周囲のカメラマンとのコミュニケーション
人気ポイントでは複数のカメラマンが並んで撮影することもあります。
後から来た場合は、先に陣取っている方に軽く挨拶をし、撮影の邪魔にならないよう配慮しましょう。割り込んだり、前に立ったりする行為はトラブルの元です。
また、カワセミが現れた際に大声で話したり、急に動いたりすると、せっかくのチャンスを逃すことになります。静かに、落ち着いて行動することが、全員にとってのメリットになります。
情報交換も楽しみの一つですが、撮影中は会話を控え、休憩時間にコミュニケーションを取るのがスマートです。お互いに良い写真が撮れるよう、協力し合う姿勢を大切にしましょう。
よくある質問(FAQ)

Q:初心者でもスマホで撮れますか?
カワセミは小さく、警戒心も強いため、スマホでの撮影は正直なところ難しいです。
スマホのズーム機能は基本的にデジタルズームであり、拡大すると画質が大幅に劣化します。また、高速で動くカワセミの飛び込みシーンを捉えるには、オートフォーカスの速度やシャッタースピードの点でも限界があります。
ただし、運良くカワセミが非常に近くに止まった場合や、かわせみの里の止まり木に長時間留まっている時などは、記念撮影程度なら可能です。最新のスマートフォンには優れた望遠機能を持つものもあるため、挑戦してみる価値はあります。
本格的に撮影を楽しみたい場合は、エントリークラスでも良いので、望遠レンズが使える一眼カメラやミラーレスカメラの購入をおすすめします。
Q:駐車場はどこが一番近いですか?
カワセミ観察の拠点となる「かわせみの里」に最も近いのは第一駐車場です。
第一駐車場から徒歩数分で主要な観察ポイントにアクセスできるため、重い機材を運ぶ際も便利です。ただし、週末や行楽シーズンは早い時間に満車になることもあるため、早朝到着を心がけましょう。
水元公園には他にも複数の駐車場がありますが、観察エリアまでの距離を考えると第一駐車場が最適です。駐車場については以下の記事をご覧ください。
公共交通機関を利用する場合は、JR常磐線・東京メトロ千代田線の金町駅からバスでアクセスできます。公園へのアクセスについては以下の記事をご覧ください。
Q:冬場は寒いですか?(防寒対策の重要性)
冬の早朝は非常に寒く、特に水辺は体感温度がさらに低く感じられます。
じっと待機する撮影スタイルでは、体が冷え切ってしまうため、しっかりとした防寒対策が必須です。重ね着、ダウンジャケット、手袋、ネックウォーマー、ニット帽などで完全防備してください。
特に手先が冷えるとシャッターボタンの操作が困難になるため、指先が出せるカメラマン用の手袋があると便利です。また、使い捨てカイロを用意しておくと、長時間の観察でも快適に過ごせます。
足元も冷えやすいため、厚手の靴下や防寒ブーツを履くことをおすすめします。温かい飲み物を持参するのも、体を温める良い方法です。
寒さ対策を怠ると、体調を崩すだけでなく、集中力も低下してシャッターチャンスを逃すことにつながります。万全の準備で臨みましょう。
水元公園のカワセミまとめ
水元公園は、都心から気軽にアクセスできながら、美しいカワセミと出会える貴重なスポットです。初心者からベテランまで、それぞれのレベルに応じた楽しみ方ができるのが最大の魅力です。
この記事でご紹介した出現ポイント、時期と時間帯、機材と設定、行動パターンの読み方を参考にすれば、空振りのリスクを大きく減らし、確実にカワセミとの出会いを楽しめるはずです。
最初は思うように撮れなくても、何度も通ううちにカワセミの習性が分かり、撮影技術も向上していきます。焦らず、自然の中で過ごす時間そのものを楽しむ心の余裕を持つことが大切です。
マナーを守りながら、素晴らしい一枚を撮りに行きましょう!






